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tora
ある人が捨て猫の日記を写真付きで書いていた
それを見て昔を思い出した
その猫はとあるボロアパートにいた
エレベーターのないアパートの1階の階段下
空洞に隠れるようにしてこっちを見ていた
その身体はあまりに細く 驚くほどに軽かった
登校途中だったからそのまま別れようとしたのに
何故か後ろをいつまでもついてくるもんだから
友人と共に「トラ」と名づけて 小学校まで連れて行った
ポストから中庭に放って隠した
その後家に連れ帰ったけど 周りに反対された
結局1日だけ家に置いて 次の日の早朝に
野良猫がたくさんいる公園に放した
しばらく経って中学生になった頃
トラを放した公園から野良猫が消えた 軽い改装を施された時に逃げたのだろうか
でもそれだけじゃなかった
仲間内で「楠木寺」と呼んでいた大きな楠木のある寺の入り口
楠木の周りにいつもいた野良猫達が神隠しにでもあったように消えた
それ以来街中で野良猫を見ることがほとんどなくなった
今思えば恐らく 保健所の手がかかったんだろう
「一人」残らず 焼き殺されたんだろうか
それからもう少し経って 受験生になった梅雨時
雨が凄い日だった 台風だったのかもしれない
塾の帰りしな いつも通る公園の前
そこに「それ」はあった
辺りはもう暗く よく見えなくて 近づいて
ようやく気付いた 「それ」はトラだった だったんだと思う
まだ俺を覚えてるのか よろよろとこっちへ近づいてきた
いつかと同じ 甘えるように擦り寄ってくる その動きは酷く弱弱しく
抱き上げた身体は 血塗れだった
どこをどう走ったのかは覚えていない
知っている動物病院へ けれど閉まっていて
どうすればいいのか解らないまま トラはずっと俺の服を舐めていた
血塗れのトラの身体には 確かに
靴跡が 「いくつも」付いていた
誰かも解らない"誰か"を これほど憎んだことは なかった
雨が酷くて 身体はずぶ濡れで もう夏なのに寒くて
けれどトラの身体は本当に温かくて
その身体がいつの間にか冷たくなってきてることに漸く気付いた
慌てて呼びかけたんだ トラは反応したよ
俺の顔を舐めてきた 遅い動きで
ざりざりの舌が痛かったけど されるままにしておいた
もう日付はとっくに変わってた
トラは俺の顔や手や服を舐めながら
何度か 蚊の鳴くような声で 泣いた
それが 最期だった
もう動かなかった
もう俺が去ろうとしても追いかけちゃ来ないし
もう俺を見つけても擦り寄ってくることはないし
もうちくわ持ってきても俺の指ごと喰おうとしたりしない
涙は出なかった
ただトラが眠れるようにずっと撫でていた
雨だけが いつまでも喚いてた
今も俺が作ったあいつの墓は あの公園にある
十字架を立てたわけじゃないから
場所で覚えているだけだけど はっきり覚えてるから
たまにあそこに立っては 煙草を吸ってる
吐いた煙に あいつが煙たがってる様を 想いながら
それを見て昔を思い出した
その猫はとあるボロアパートにいた
エレベーターのないアパートの1階の階段下
空洞に隠れるようにしてこっちを見ていた
その身体はあまりに細く 驚くほどに軽かった
登校途中だったからそのまま別れようとしたのに
何故か後ろをいつまでもついてくるもんだから
友人と共に「トラ」と名づけて 小学校まで連れて行った
ポストから中庭に放って隠した
その後家に連れ帰ったけど 周りに反対された
結局1日だけ家に置いて 次の日の早朝に
野良猫がたくさんいる公園に放した
しばらく経って中学生になった頃
トラを放した公園から野良猫が消えた 軽い改装を施された時に逃げたのだろうか
でもそれだけじゃなかった
仲間内で「楠木寺」と呼んでいた大きな楠木のある寺の入り口
楠木の周りにいつもいた野良猫達が神隠しにでもあったように消えた
それ以来街中で野良猫を見ることがほとんどなくなった
今思えば恐らく 保健所の手がかかったんだろう
「一人」残らず 焼き殺されたんだろうか
それからもう少し経って 受験生になった梅雨時
雨が凄い日だった 台風だったのかもしれない
塾の帰りしな いつも通る公園の前
そこに「それ」はあった
辺りはもう暗く よく見えなくて 近づいて
ようやく気付いた 「それ」はトラだった だったんだと思う
まだ俺を覚えてるのか よろよろとこっちへ近づいてきた
いつかと同じ 甘えるように擦り寄ってくる その動きは酷く弱弱しく
抱き上げた身体は 血塗れだった
どこをどう走ったのかは覚えていない
知っている動物病院へ けれど閉まっていて
どうすればいいのか解らないまま トラはずっと俺の服を舐めていた
血塗れのトラの身体には 確かに
靴跡が 「いくつも」付いていた
誰かも解らない"誰か"を これほど憎んだことは なかった
雨が酷くて 身体はずぶ濡れで もう夏なのに寒くて
けれどトラの身体は本当に温かくて
その身体がいつの間にか冷たくなってきてることに漸く気付いた
慌てて呼びかけたんだ トラは反応したよ
俺の顔を舐めてきた 遅い動きで
ざりざりの舌が痛かったけど されるままにしておいた
もう日付はとっくに変わってた
トラは俺の顔や手や服を舐めながら
何度か 蚊の鳴くような声で 泣いた
それが 最期だった
もう動かなかった
もう俺が去ろうとしても追いかけちゃ来ないし
もう俺を見つけても擦り寄ってくることはないし
もうちくわ持ってきても俺の指ごと喰おうとしたりしない
涙は出なかった
ただトラが眠れるようにずっと撫でていた
雨だけが いつまでも喚いてた
今も俺が作ったあいつの墓は あの公園にある
十字架を立てたわけじゃないから
場所で覚えているだけだけど はっきり覚えてるから
たまにあそこに立っては 煙草を吸ってる
吐いた煙に あいつが煙たがってる様を 想いながら
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